山下達郎 ■Original Albums and More ■竹内まりや 山下達郎 ■Live 山下達郎	PERFORMANCE 2019
	ステージセットはかみてにトラムの停留所、奥にはCENTRALNAの建物(ワルシャワ中央駅?)。中央にはトラムがあり、その向こうはヨーロッパを思わせるアパートメントと山並み。しもてにはレストランがあり、開演すると明かりが灯り、扉を開けて山下達郎が現れた。 エメラルド・グリーンのシャツを着た山下達郎はツアー前半の七月上旬に気管支炎を患い、休養こそが回復の一番の近道だと診断され、思い切って中野サンプラザ公演2デイズを中止、静養した。八月の終わりの神戸公演では万全の体調に戻っており、声量も十分あって素晴らしかった。 ツアーは神戸公演の前に渋谷公会堂二日間と熊本城メインホールのこけら落とし公演が決定。渋谷公会堂は追加公演として発表されたが実質中野サンプラザの振替公演で、ツアーは当初の50本から51本に増えた。 2013年12月30日に亡くなった大瀧詠一。今年の年末には七回忌を迎えるそうだ。山下達郎の身近な仲間が近年相次いで世を去っている。レコーディングやツアーを一緒に廻った青山純、村田和人、佐藤博。ギターの先生だった松木恒秀。仲のよかったピアニストの佐山雅弘。とりわけ大瀧詠一は特別な存在で、亡くなった直後はメディアからコメントを求められたり、彼のファンのナイアガラ―には、恩人の死を前にして言葉を失い、頑なに心を開こうとしなかった。これまでは。でも年を重ねて大瀧詠一が亡くなった年齢を超えてからは変なわだかまりがなくなったという。 「君は天然色」は四半世紀ほど前に大瀧詠一を交えた仲間とカラオケに行ったことがあり、そのときに歌ったら「この曲はお前にやるよ」と言われたことがあるそうだ。このところのツアーでは山下達郎のオリジナルよりカヴァーのほうがうけると話したが、僕にとっては感慨深いものになった。山下達郎が「君は天然色」を歌う。その瞬間はうれしさで一杯になり、楽しい気分だった。でもだんだん感情が込み上げてきて涙がこぼれそうになった。寸でのところで落涙は免れたものの、僕はこの瞬間に感情がかき乱されて冷静に音楽を楽しむ余裕はなくなってしまった。 歌い終えた山下達郎は母方のルーツが岩手県の江刺にあって、大瀧詠一も生まれは江刺でそこから花巻に行ったのだと話した。もしかしたら遠い昔、姻戚関係だったかもしれず、その証拠に初めて細野晴臣と会ったとき、「大瀧、弟がいたのか」と言われたことがあったそうだ。 「近しい人が亡くなって、それがミュージシャンの場合は作品が残るので、歌を歌い継いでいくことによって、記憶に留めておくことができる。日本で大瀧さんの曲を歌えるのは僕ひとりだと思います。自分にはその義務があるし資格もある」と山下達郎は言った。 ■2019年8月30日（金） 神戸国際会館こくさいホール 1階4列13番 山下達郎(Vocal,Guitar) 小笠原拓海(Drums) 伊藤広規(Bass) 難波弘之(Acoustic Piano & Rhodes) 柴田俊文(Keyboard) 佐橋佳幸(Guitars) 宮里陽太(Saxophone) ハルナ(Background Vocal) ENA(Background Vocal) 三谷泰弘(Background Vocal) Set List Opening B.G.M: Custom Made 01 Sparkle 02 あまく危険な香り 03 Donut Song 04 土曜日の恋人 05 Paper Doll 06 FUTARI 07 Southbound #9 08 君は天然色 09 Reborn 10 セールスマンズ・ロンリネス -Salesman's Loneliness 11 バラ色の人生～ラヴィアンローズ 12 Bella Notte 13 Smoke Gets In Your Eyes 14 Deck The Halls～クリスマス・イブ 15 蒼氓 16 Get Back In Love 17 Bomber 18 Let's Dance Baby 19 ハイティーン・ブギ 20 アトムの子 Encore 21 プラスティック・ラヴ 22 硝子の少年 23 Ride On Time 24 DOWN TOWN 25 Your Eyes Closing B.G.M: That's My Desire
	神戸公演の二日前に大阪、京橋のBERONICAで宮里陽太クァルテット with 佐橋佳幸を観た。宮里陽太のライヴを聴きに行くのはそれが初めてのことだった。メンバーの一人は小笠原拓海で、ライヴハウスならではの至近距離で聴く彼らの演奏は本当に素晴らしかった。 PERFORMANCE 2019で大阪公演は7月、8月、9月の三ヶ月間に毎月二日連続で行われた。会場はフェスティバルホールで2013年に新築開業してから丸6年。昔のフェスティバルホールと同じ方角で再建されており、山下達郎はやってると昔の記憶がフラッシュバックすることがあると話した。クラシックからバレエ、落語、ポップスなど多目的に使用されるホールなので、そこに立つ芸人の血と汗と涙が凝縮されてるから、ステージに立つと背筋がピンと伸びる思いがするそうだ。 2008年にツアーを再開して9シーズン目。山下達郎を含めたギター、ベース、ドラム、ピアノ、セカンド・キーボードの6人はそのときから不変で、もうバックバンドというよりバンドの佇まい。'80年代はメンバーの入れ替えが度々あったので、同じメンバーで10年やったのは初めてのことだという。 現在では譜面の力を借りると演奏できるレパートリーは70曲に達し、ライヴでは20数曲しか披露できないため曲がいつもオーバー・フローしているとか。殺伐とした世の中なので今年のセットリストは明るい曲を中心にしたそうだ。 神戸公演では僕自身、「君は天然色」で心が揺さぶられ、それ以降は気持ちが散り散りになってしまって、上の空の状態であった。「Reborn」も山下達郎にとって重要な作品なり、これから大切に歌っていきたい曲なのだという。誰かにとっては親が亡くなったり、あるいは子どもや孫が生まれたりして、思いやりや優しさが醸成されてゆく。そんな思いが込められている。曲が発表された頃はあまり響いてこなかったのだが、僕もまた彷徨いながら生きていく中で打つものがあった。 ここ数年海外から日本のシティ・ポップのレコードを求める動きがあり、YouTubeに上げられた音源によって大貫妙子や竹内まりやが注目されている。山下達郎のレコードもまた彼ら、海外の若い世代のリスナーに人気があり、アルバム『Go Ahead!』はマストバイのレコードになってるそうだ。発売された当時は3万6千枚しか売れず、そのうちの半分は「Bomber」がディスコで火が付いた大阪で売れたとか。ある日、中古レコード店で山下達郎に声をかけたアメリカ人の若者。彼も『Go Ahead!』を手にしていて、山下達郎はサインを求められたという。年齢を聞くと30歳で、なんとかしてライヴを聴きに行くから、そのときは「Bomber」が聴きたいと、リクエストされたそうだ。 お馴染みの「Let's Dance Baby」のメドレーは竹内まりやデビュー40周年にちなんで「竹内まりや」特集。「不思議なピーチパイ」や「リンダ」という初期の曲から、「元気を出して」や「もう一度」、「けんかをやめて」等の代表曲、「毎日がスペシャル」、「クリスマスは一緒に」も披露した。竹内まりやといえば先ほど触れたシティ・ポップで脚光を浴びている。無断でネットに上げられた「プラスティック・ラヴ」は現在までに250万回再生されているという。 アンコール前の幕間にコーラス隊の位置にマイク・スタンドが4本立てられた。竹内まりやが出てくるんじゃないかと期待に胸を膨らませた。正直に言うともういつ竹内まりやが出てくるのかと気になって、ステージに集中できなくなっていた。結局のところ「DOWN TOWN」で三谷泰弘がクラビノーバを演奏しながら歌うので、そのためのマイクをセッティングしただけだった。PERFORMANCE 2015 - 2016以来、「DOWN TOWN」はシュガーベイブ時代のアレンジに戻して演奏されている。宮里陽太はタムを叩いてるのはそのためだ。今年は佐橋佳幸がこの歌のときだけアイボリーのストラトに持ち替えていた。 この日は前半エヘン虫が出たのでお詫びにということでおまけが加えられた。僕は全く気が付かなかったけれど、むしろ喉の調子、声量は絶好調だと思っていたので、少し驚いたがうれしかった。最後に山下達郎は「世界中が殺伐として、不安に満ちた空気が覆っている」と言った。その原因はSNSにあるような気がしていて、匿名での批判、罵倒、ののしりあいがいろいろなところで起こっているのだと。せめて音楽の場だけは、「寛容さ」と「いたわり」と「誠実さ」と「優しさ」で包みたいと思っていて、これからもやっていきたいと語った。 ■2019年9月16日（月・祝） フェスティバルホール 1階15列28番 山下達郎(Vocal,Guitar) 小笠原拓海(Drums) 伊藤広規(Bass) 難波弘之(Acoustic Piano & Rhodes) 柴田俊文(Keyboard) 佐橋佳幸(Guitars) 宮里陽太(Saxophone) ハルナ(Background Vocal) ENA(Background Vocal) 三谷泰弘(Background Vocal) Set List Opening B.G.M: Custom Made 01 Sparkle 02 あまく危険な香り 03 Donut Song 04 土曜日の恋人 05 Paper Doll 06 FUTARI 07 Southbound #9 08 君は天然色 09 Reborn 10 セールスマンズ・ロンリネス -Salesman's Loneliness 11 バラ色の人生～ラヴィアンローズ 12 Bella Notte 13 Smoke Gets In Your Eyes 14 Deck The Halls～クリスマス・イブ 15 蒼氓 16 Get Back In Love 17 Bomber 18 Let's Dance Baby 19 ハイティーン・ブギ 20 アトムの子 Encore 21 プラスティック・ラヴ 22 硝子の少年 23 Ride On Time 24 DOWN TOWN 25 Last Step 26 Your Eyes Closing B.G.M: That's My Desire
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