01. 私の人生 02. 君がいなくちゃ 03. 最後の手紙 04. いつもの空 05. 或る秋の日(Alternate Mix) 06. 新しい君へ 07. 永遠の迷宮 08. みんなの願いかなう日まで Produced by 佐野元春 Co Produced by 大井洋輔 Recorded & Mixed by 渡辺省二郎 Mastering Engineer : Ted Jensen

或る秋の日 POCE-9396 オリジナル・リリース 2019.10.9 チャート最高位14位 これまでCD化されてなかったダウンロード・オンリーの4曲に、書き下ろしの4曲を加えた全8曲。シンガー・ソングライターとしての側面に焦点を当てた内容で、そのせいかコヨーテバンド名義ではなく、佐野元春のソロ作品という佇まいのアルバム。 発表された年代がいちばん古いのは「みんなの願いかなう日まで」。2013年12月だからほぼ6年も前になる。その次が2015年3月の「君がいなくちゃ」。この2曲はアルバム『Blood Moon』のアウト・テイクとしてこのサイトでも取り上げていた。2015年には「君の人生」がキャノン EOS 8000Dの特設サイトで公開されたドラマ『遠まわりしようよ、と少年が言った』のために書き下ろされ、2016年11月に3トラックEP『或る秋の日』に収められた。タイトル・トラック「或る秋の日」も収録されている。 未発表曲4曲についてだが、いちばん古い録音が2014年3月で、7月、9月、2015年1月までに断続して行われたコヨーテバンドとのセッションの中から選曲されている。おそらくはバンド・メンバーによる演奏ではなく、曲の傾向によって、例えば藤田顕にエレクトリック・シタールを演奏してもらう(「最後の手紙」)、渡辺シュンスケにフェンダー・ローズを演奏してもらう(「いつもの空」、「新しい君へ」)という感じで、バンド・スタイルの演奏にこだわらず行われたものだろう。 さて、「最後の手紙」だが、"いつか君に贈ったあの唄を"の一節は佐野元春ファンならば誰もが気になるところだろう。歌の後半は歌詞をスキャットにして、あえて言葉を紡いでいないなど、ヒントはほぼない。でも思い巡らせば"Happiness & Rest"と歌った「SOMEDAY」なんかがあの唄にふさわしいような感じがする。 喪失がテーマになった曲は続き「いつもの空」もそう。強がりを言う歌の主人公の心象風景に"外は曇り空　いつもの東京の空"と綴るセンスは筆舌に尽くしがたい。もう一曲喪失がテーマの「新しい君へ」。"おとなになった今　いのちは儚いと知った"は"命は短い　恋をしよう"と歌った過去には考えられない深さがある。 「永遠の迷宮」はトランス・ジェンダーの深遠な世界観をテーマにしたそうだが、そうした主題は全く読みとれなかった。むしろサウンド・デザインに「君をさがしている」のようなフォーク・ロック・サウンドが隠し味的に施されてるほうに関心を寄せた。 ダウンロード販売の4曲を含むアルバムがアウト・テイク集ではなく、オリジナル・アルバムとして聴き応えのある作品に仕上げられたのは、佐野元春のソングライターたる所以で面目躍如だろう。練られた曲順によりそれぞれが有機的に結びついてる印象がある。全体としては収録時間も短いのだが、味わい深い余韻が残る作品だ。 ●通常盤 ●アナログ盤 高品質マスターからカッティングした180グラム重量盤。限定生産。 ●サブスクリプション/ダウンローディング AppleMusicで『或る秋の日』を聴く。