名盤ライブ「Sweet16」
佐野元春 and The Sweet16 Grand Rockestra
佐野元春が1992年にリリースしたアルバム『Sweet16』の全曲再現ライヴを横浜と大阪で開催した。名盤ライブはスタジオ録音のオリジナル・アルバムを曲順通り、アレンジも忠実にアーティスト本人が全曲再現するもので、ドキュメンタリーDVDとアーカイヴBOOKを合わせた３つの要素で構成されたイベント。

今回の名盤ライブは大阪公演を収録した有料配信が2023年1月22日に行われることになっていて、チケットは名盤ライブの特設サイトで、会場配布のグッズとして制作された「THE BOOK」と「THE DVD」のセットを購入するか、ライヴの参加者のみが会場で有料配信チケットを購入するという販売方法が採られている。リピート配信は1月27日。

すべての楽曲をオリジナルのアレンジで演奏する名盤ライブ。そのためにサポート・ミュージシャンはザ・ハートランドから古田たかしと長田進、ザ・ホーボーキングバンドからDr.kyOnと井上富雄、ザ・コヨーテバンドから渡辺シュンスケ、藤田顕、そしてスパム春日井がそれぞれ選ばれている。ホーン・セクションは山本拓夫と西村浩二という35周年ライヴ以降お馴染みになったふたりに、コーラスは佐々木久美と、初参加のタイガーという布陣で、佐野元春を含めた12人編成の大所帯バンドが編成された。

今回の名盤ライブはアルバム『Sweet16』の30周年を回顧する企画であったが、30周年記念盤の発売前に行われた。『Sweet16』は最新のデジタル・リマスタリングが施されたCDで再発しているが、ボーナス・トラックやボーナス・ディスクが付いた編集盤は2023年2月発売の『Sweet16 30th Anniversaty Edition』が初めてになる。ちなみに今回の30周年盤のリマスタリングはアルバム『今、何処』に関わったランディ・メリルが行っているそうだ。

名盤ライブの前に『Sweet16』を聴いたのは当日の午前中に一度だけ。ぶっつけ本番みたいな感じでライヴに参加した。オリジナルのアレンジに忠実な演奏なので歌のキーも同じで、最近のライヴとはまた違ったヴォーカル・スタイルが新鮮だった。ライヴは何の問題もなく繰り広げられて、オーディエンスはすぐに沸点へと達した。

「レインボー・イン・マイ・ソウル」を歌う前に佐野元春は「僕の心に虹がかかっている」と言って、そのときに少し冷静になり、ライヴを楽しむ余裕が生まれた。アルバムの中でいちばんファンキーな曲と佐野元春が話した「ポップチルドレン」。ホーボーキングバンドではブギー・ロックで披露する楽曲もオリジナルのアレンジでは確かにファンキーに聞えた。スポークンワーズの領域に入る「廃墟の街」はおそらく初めてライヴで演奏したのではないだろうか。

タカミネのエレクトリック・アコースティック・ギター(エレアコ)が懐かしい「誰かが君のドアを叩いている」。ココリコの田中直樹さんから一時的に返却してもらったというエピソードに和む。エピフォンのセミアコはTDKのCMで使っていた当時のものだとか。「君のせいじゃない」でそのセミアコを弾きながら佐野元春は歌った。「ボヘミアン・グレイブヤード」のエンディングでは多様なフェイク・ヴォーカルが思ってたより長く感じられ、「ハッピーエンド」、「ミスター・アウトサイド(リプリーズ)」へとなだれ込んだ。

何かがそのあたりで入れ替わったんだと思う。フォーカスが30年前から現代に合ったというべきかもしれない。もう二度と戻ることはできない世界に気が付いたら立っていた。「エイジアン・フラワーズ」のエンディングにジョン・レノンの存在を確かに感じて感傷的な気持ちになった。「また明日...」が悲しく聞えて心が揺さぶられた。今の佐野元春の歌声が哀しみを帯びて響いた。

アンコールで披露されたのは「約束の橋」。佐野元春は歌う前に「Happy Birth Day Sweet16 !」と言った。1992年にドラマ『二十歳の約束』の主題歌に採用された「約束の橋」。チャート4位のヒットに輝き、プラチナ・シングルにもなった。もう1曲は1992年11月にリリースしたシングルの「彼女の隣人」ではないかと予想していたが、なぜか「ヤング・フォーエバー」という選曲だった。

今になって考えてみると「彼女の隣人」よりも「ヤング・フォーエバー」のほうがカタルシスを味わえる。スウィート16・グランド・ロッケストラのパフォーマンスを楽しめる。Dr.kyOnがリッケンバッカーのギターを弾いて、前に出てきて、大いに盛り上がったのは紛れもなく事実だった。圧倒的な喝采がそこにあった。今この時代に求められているのそのような祝祭なのかもしれない。

■名盤ライブ「Sweet16」
2022年11月27日(日) 1st Stage
Zepp Namba OSAKA
1階 C列30番

佐野元春 and The Sweet16 Grand Rockestra
佐野元春(Vocals, Guitars)
古田たかし(Drums)
長田進(Guitars)
Dr.kyOn(Keyboards, Guitars)
井上富雄(Bass)
藤田顕(Guitars)
渡辺シュンスケ(Keyboards)
スパム(Percussion)
山本拓夫(Saxphone)
西村浩二(Trumpet)
佐々木久美(Chorus)
Tiger(Chourus)

Setlist
01 ミスター・アウトサイド
02 スウィート16
03 レインボー・イン・マイ・ソウル
04 ポップチルドレン(最新マシンを手にした陽気な子供たち)
06 廃墟の街
07 誰かが君のドアを叩いている
08 君のせいじゃない
09 ハッピーエンド
10 ミスター・アウトサイド(リプリーズ)
11 エイジアン・フラワーズ
12 また明日...
Encore
13 約束の橋
14 ヤング・フォーエバー

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