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佐野元春 and The Coyote Band COYOTE BAND 2012 Early Summer Tour |
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| 三度目となったコヨーテバンドとの全国ライヴハウス・ツアーが行われた。バンドには昨年末からプレクトラムのギタリスト藤田顕が新しいメンバーとして加わったが、今回はその新しい編成になったバンドのツアーだ。現在佐野元春はこのコヨーテバンドとレコーディングをしていて、ツアー終了後に再びバンドとスタジに入り、レコーディングを再開するそうだ。運がよければ今年の暮か、年が明けて雪が降りだす頃、コヨーテバンドのニュー・アルバムをファンのもとへ届けたいと話していた。 ライヴはビートルズの「Lucy With The Diamonds In The Sky」がながれる中で暗転しスタートした。最初はバンドだけの演奏でインストゥルメンタル・ナンバー。イギリスのビート・バンドのような轟音のサウンドを場内に轟かせた。新編成のコヨーテバンドはブリッティッシュ・ロックのマナーで演奏をする。佐野元春の出番は「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」から。ハンドマイクによるパフォーマンスでバンドのフロントマンというスタイル。ポール・スミスのクラシックとアバンギャルドが融合した三つボタンのスーツを着ていた。 悪い夢を見ているような厳しい現実に、佐野元春は大きな音でロックンロールを鳴らして対抗しようとしているみたいだった。「欲望」はバブル経済が弾けて、長く続く不況の時代がはじまる1990年代の初頭に書かれた曲。東日本大震災の後にこの曲の歌詞もまた新たな意味合いを持つようになった。ソングライターとしての佐野元春の凄みを感じさせたのは「Visitors」だ。"This is story about you"というラインが今この時代に放たれるとは誰も思いはしなかっただろう。この厳しい現実に直接的なコミットメントを持つこと。そんなメッセージを突きつけられた思いがして、今一度現実を見つめ直し、自分自身の責任について考えないといけない気持ちになった。 中盤には今レコーディングしているニュー・アルバムからの新曲が披露された。「La Vita e Bella」という仮タイトルの曲はポップ・ソングで、何が歌われるのか歌詞に耳を傾けた。フックで"この先に、もっと"という言葉があった。それは「太陽」に符合する言葉で心が揺さぶられた。未来に向けた前向きな姿勢がうれしかった。もう一曲はアコースティック・ギターのリードではじまる「虹をつかむまで」。二人称を主語にした佐野元春イディオムの楽曲。"おおらかな人生を夢見てる君 / 虹をつかむまであともう少し"と柔らかな言葉が印象的だった。またよく聴き取れなかったが"いいときも / 悪いときも / .......... / どこかに河がある"というラインもあった。「Rock and Roll Night」のアンサー・ソングのような楽曲でファンにとっては重要な意味を持つことになるんじゃないかと思った。 今回のライヴでポイントとなった楽曲は「警告どおり 計画どおり」だろう。24年前の1988年に書かれたこの曲は日本の原子力産業と行政に対して異議申し立てをした曲だ。ネタばれしていてこの楽曲が今回のツアーで披露されることは知っていた。これまでステージにかけられたことはなく、まるでお化けを見るような気持ちでライヴの日を迎えた。今年5月に日本の原発がすべて運転を停止してから、政府の判断で大飯原発三号機四号機の再稼動が決まるまでに騒動が起こった。国のエネルギー政策がはっきりと提示されない中での再稼動に国民の不満は高まっている。この時期に「警告どおり 計画どおり」を聴くというのはどんな気がするのだろうと不安を抱いていたが、結果としてはこうした原発の問題に関して佐野元春が態度を表明したというふうに僕は捉えた。コミットメントする姿勢が見られたことで新たに課題を突きつけられた感じがした。ライヴでは「警告どおり 計画どおり」と大胆にアレンジを変えスカで演奏した「僕にできることは」がセットになっており、このあたりに佐野元春の思いを察することができた。 後半はオールタイムベスト的な選曲。一年半前の「ソウルボーイへの伝言」磔磔公演では「Someday」を歌わなかったので、僕は今回のツアーでようやくコヨーテバンドが演奏する「Someday」を聴くことができた。間奏のサックスのソロは佐野元春のハーモニカに変更していたが、そこに脈々と息づく希望に胸が震えた。 アンコールではコヨーテバンドのアイデンティティといえる曲が披露された。成長することについて歌った「黄金色の天使」がセットリストに復帰したのはうれしかった。「君が気高い孤独なら」は新しいアレンジで演奏された。R&Bの色が濃くなりギター・バンドだけではないこのバンドの姿を垣間見た。そして最後に「誰かのノスタルジーのために歌いたくない。コヨーテバンドと今を歌いたい」と話して「Young Bloods」。オリジナルのR&Bのアレンジで横のつながり、連帯をオーディエンスと共有した。 ■佐野元春 and The Coyote Band 2012 Early Summer Tour 2012年6月29日(水) ZEPP Namba OSAKA 1階C列33番 佐野元春 and The Coyote Band 佐野元春(Vocals, Guitar) 小松シゲル(Drums) 深沼元昭(Guitar) 藤田顕(Guitar) 高桑圭(Bass) 渡辺シュンスケ(Keyboards) Setlist 01 インストゥルメンタル 02 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 03 荒地の何処かで 04 夜空の果てまで 05 Us 06 欲望 07 Visitors 08 New Age 09 レインガール 10 マナサス 11 La Vita e Bella 12 虹をつかむまで 13 ぼくは大人になった 14 警告どおり 計画どおり 15 僕にできることは 16 約束の橋 17 Someday 18 Down Town Boy 19 アンジェリーナ Encore 20 黄金色の天使 21 君が気高い孤独なら 22 Young Bloods |
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