佐野元春 & THE COYOTE BAND ROCKIN' CHRISTMAS 2023

4年ぶりに大阪で開催されたロッキン・クリスマスのオープニングは「Peace On Earth / Little Drummer Boy」のインストだった。そのマーチング・ドラムが鳴り響く中でメンバーが現れ、佐野元春がいつものライダーズ・ジャケットに、なんとサンタ帽を被った出で立ちで登場してライヴの幕が開いた。今回のロッキン・クリスマスもセットリストはコヨーテバンドのレパートリーを中心にしていて素晴らしいパフォーマンスが繰り広げられた。 第一部は「私の人生」からはじまる意表を突いたスタート。2019年に佐野元春のソロ名義でリリースされたミニ・アルバム『或る秋の日』からのナンバー。ライヴで披露するのは多分初めてだと思う。"人のことなど誰もわかっちゃいない"というラインと共にとりとめのない日々について歌われる。「君が気高い孤独なら」と続いて「境界線」。まるで新しいコンピレーションを聴くようなセットリストが新鮮だった。2000年代のクリスマス・ソング「みんなの願いかなう日まで」を交えて約40分全8曲が演奏された。 第二部ではいきなり「銀の月」、「クロエ」とアルバム『今、何処』の楽曲が披露された。中でも「冬の雑踏」はこの季節に聴くと季節がぴったりで、最近ライヴ・レポートでよく見られる"Vibes"という表現を地でいくようなグルーヴに酔いしれた。「今日は25日。クリスマス・デー、正に今夜ですね。いつもこの季節になると思うこと。この世界の何処かに傷ついた子どもたち、大人たちが、同じ空の下にいるということ。僕らの世界に本当の平和が訪れることを祈ってこの歌を歌います」。「クリスマス・タイム・イン・ブルー」を歌う前に佐野元春はそう話した。それが今年のロッキン・クリスマスの主題だったのかもしれない。ロシアのウクライナ侵攻は続いていて、パレスチナのガザ地区ではイスラエルの報復攻撃で街が破壊されている。佐野元春は現在の状況に対して平和を希求する心情をクリスマス・ソングに託したのだと思う。オープニングを飾った「Peace On Earth / Little Drummer Boy」が、「みんなの願いかなう日まで」が重層的に響いた。「Peace On Earth / Little Drummer Boy」は世界の平和はあり得るだろうか、仲間を大切に、ありったけの愛を与えられるよう、願いがかなうように祈る、といった内容だ。 アンコールの「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」では何処にも行くことができない思いが歌われて、そして「Sweet16」、復興に向けてがんばってる人たちに捧げられた「La Vita e Bella」へと続いた。今もミサイルが何処かに着弾し街に火の手が上がっている。そんな暗闇に佐野元春のロックンロールが鳴っている。尽きせぬ思いがあったのか、佐野元春はステージの袖に向かってギターの用意を促した。「今年ももう少しで終わります。みんな景気よく行こう」って言って「アンジェリーナ」を歌った。 ■佐野元春 & THE COYOTE BAND ROCKIN' CHRISTMAS 2023 2023年12月25日(月) Zepp Osaka Bayside 1階C列11番 佐野元春(Vocals, Guitar) 深沼元昭(Guitar) 高桑圭(Bass) 小松シゲル(Drums) 渡辺シュンスケ(Keyboards) 藤田顕(Guitar) 吉川清海(Percussion) Set List Opening : Little Drummer Boy(Produced by Motoharu Sano) 1st Set 01 私の人生 02 君が気高い孤独なら 03 境界線 04 バイ・ザ・シー 05 天空バイク 06 世界は慈悲を求めている 07 みんなの願いかなう日まで 08 エンタテイメント! Pause(20 Minutes) 2nd Set 09 銀の月 10 クロエ 11 冬の雑踏 12 愛が分母 13 純恋(すみれ) 14 クリスマス・タイム・イン・ブルー 15 水のように 16 大人のくせに Encore 17 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 18 Sweet16 19 La Vita e Bella 20 アンジェリーナ Closing : Christmas Time In Blue(Orchestra Version) Blu-Ray『佐野元春 & THE COYOTE BAND ライブ「今、何処」東京国際フォーラムホールA』 CD『佐野元春 & THE COYOTE BAND ライブ「今、何処」東京国際フォーラムホールA』