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佐野元春 and The Coyote Band 2012 - 2013 WINTER TOUR |
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| 新生コヨーテバンドによる初めての全国ホール・ツアーの一環として、1月12日に佐野元春の神戸公演が行われた。パーカッションにスパムが復帰し、佐野元春とバンドは夏から一段とスケール・アップしたステージを繰り広げた。 幕開けのインストゥルメンタルに続いて演奏されたのは「アンジェリーナ」だった。オーディエンスはロックンロールの初期衝動に突き動かされるようにして会場を熱く揺らした。夏のツアーはスタンドマイクのパフォーマンスが多くて、古くからのファンの一部で不評だったが、そうした雑音に佐野元春はグレッチを弾いて黙らせた。からだの中を貫くビートが僕に昔のライヴのことを思い出させた。 「この間の選挙、みんなどう思った? 僕は不満だね」と佐野元春。迷走を続けた民主党が、衆議院を解散して行った年末の衆院選。小選挙区制度の弊害で地滑り的に自民党が圧勝した。今回の選挙の公約の中で自民党は原発再稼動を容認していた。果たしてこの選挙後の新政府は国民の信任を得たといえるのかどうか。佐野元春は「国のための準備」を歌うことで自分の立場を表明した。 さて、コヨーテバンドは佐野元春より一世代下のミュージシャンたちが集まり、アルバム『COYOTE』を発表したところからはじまった。ライヴ・ツアーのデビューはそれから二年後の2009年だった。2010年のクラブ・サーキット・ツアー、そして夏のツアーを経てバンドは一体感が増し、今また新しいオリジナルのスタジオ録音盤を作った。 その新しいアルバム『ZOOEY』から昨年の夏にも披露された「虹をつかむ人」と「La Vita e Bella(ラ・ヴィタ・エ・ベラ)」、そして今回は新たにもう一曲「ポーラスタア」がステージにかけられた。スポークンワーズのように言語傾向の強い楽曲だ。歌詞はほとんど聞き取れなかったが運命に翻弄される人生のことを歌ってるようだった。 ファンのコア層が四十代になり、デビュー後の数年のように十代、二十代の若い世代と触れ合う機会が減った今、佐野元春を活性化したのはテレビ番組「佐野元春のザ・ソングライターズ」に参加する学生たちとの交流だったと考えられる。彼らと一緒になってソングライティングを掘り下げて探求することにより、佐野元春自身の感性が研ぎ澄まされて、新しい作品へと結実したのではないだろうか。 ステージの中盤はこれまでコヨーテバンドで演奏してなかった元春クラシックスを披露した。「彼女」は佐野元春がエレクトリック・ピアノを弾きながら歌った。このツアーから登場したコヨーテバンドのエンブレムが、ステージのバックスクリーンにセットとしてぶら下がっていたが、エレピにもこのエンブレムがあしらわれていた。「冒険者たち」はアレンジを変えてアコースティックに。「Heart Beat」で佐野元春はブルース・ハープを披露した。そのせつないアウトロの余韻に胸が震えた。佐野元春の表現した蒼い痛みに共振したのかもしれない。 「Complication Shakedown」と「99ブルース」はホーボーキングバンドのアレンジを引き継いだ演奏だった。ホーボーキングバンドの定番になっていた「Young Forever」、佐野元春の代表曲のひとつ「約束の橋」。そしてハイライトは「ロックンロールナイト」と「Someday」。コヨーテバンドと佐野元春はこれまでになくひとつに結びつき、本当に素晴らしかった。 「これまで30年以上歌ってきました。この街にも何度か訪れて、その時々で観に来てくれた人もいると思います。今夜こうしてここでみなさんが集まってきてくれたことは僕は奇跡に近いことだと思ってます。いいことも悪いこともありました。いま僕らが立ってる場所、そして僕らがこれから向かおうとする場所。そこに敬意をこめてこの歌を歌いたいです」そんなふうなことを佐野元春は話して本編の最後に「Young Bloods」を歌った。 インターネットの普及により音楽のダウンロード販売が増えてCDが売れなくなった。ライヴでもそのことに言及して「ライヴに来てくれることで音楽が続けられる」というようなことを話していた。ラジオも現代ではリスナーを獲得するのが難しくなってる。このような状況で今何が必要とされているのか。その答えを模索しているようにも思えた。「音楽は男女の性別や世代を超えるというけれど、それを証明したい」と言って最後に歌ったのは「悲しきRadio」だった。昔のようにフェンダーの赤いストラトキャスターを弾いてロックンロールをシャウトした。 アンコールが終わって佐野元春は最後に「今夜気がついたことがある。すべてのものは受け継がれてゆくということ」と話した。それがバンドのことを言ってるのか、精神の系譜のようなことを言ってるのか、僕にはよくわからなかった。「まぁ、考えて」と佐野元春。でもそこには確かに希望が感じられた。 『ZOOEY(デラックス盤)』を購入する。 『ZOOEY(初回盤)』を購入する。 「世界は慈悲を待っている」を購入する。 ■佐野元春 and The Coyote Band 2012-2013 WINTER TOUR 2013年1月12日(土) 神戸国際会館こくさいホール 1階13列36番 佐野元春 and The Coyote Band 佐野元春(Vocals, Guitar) 小松シゲル(Drums) 深沼元昭(Guitar) 藤田顕(Guitar) 高桑圭(Bass) 渡辺シュンスケ(Keyboards) 大井'SPAM'洋輔(Percussions, Sound Editor) Setlist 01 Coyote Theme 2013(インストゥルメンタル) 02 アンジェリーナ 03 スターダスト・キッズ 04 Down Town Boy 05 星の下 路の上 06 夜空の果てまで 07 国のための準備 08 虹をつかむ人 09 La Vita e Bella 10 Polar Star 11 彼女 12 Wild Hearts 13 Heart Beat 14 Complication Shakedown 15 99 Blues 16 Young Forever 17 約束の橋 18 Rock 'n' Roll Night 19 Someday 20 Young Bloods Encore 21 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 22 悲しきRadio |
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