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佐野元春 and The Coyote Band 2014 AUTUMN TOUR |
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| 今回のツアーはコヨーテバンドの代表曲を年代順に演奏する構成で、佐野元春は聴衆に多くを語りかけた。佐野元春がライヴでそんなに話をするなんて思ってもみなかったし、僕はこれまで経験したことがない。たとえばアルバム『COYOTE』から5曲を演奏したわけだが、印象的だったのは「黄金色の天使」を歌う前に「この曲は友だちについての歌、未来の友だちについての歌でもあるし、僕自身についての歌でもある。人は何かを探し続けて生きている。僕の場合は心の中の変わらない何か。それは黄金色の天使」というふうなことを佐野元春は聴衆に話した。 アルバム『ZOOEY』からは前回のツアーでも披露した「虹をつかむ人」と「La Vita e Bella(ラ・ヴィタ・エ・ベラ)」、「ポーラスタア」の3曲に、コードがふたつしかないという「世界は慈悲を待っている」、ツアーでははじめての演奏になる「スーパー・ナチュラル・ウーマン」、そして6曲目は「詩を聴いてもらいたい」と話して「詩人の恋」を歌った。"革命は静かに始まっているよ"と歌うこの曲が好きだ。心が揺さぶられる。余韻に浸っていると佐野元春は「あれ、みんな、なんかしんみりしちゃってるんじゃない? ロック・コンサートなんだからね、しんみりする必要なんかない」と語りかけた。 また、佐野元春は来年でデビュー35周年を迎えることについて言及し、コヨーテバンドと新しいアルバムの製作に着手していて、来年リリースする計画であることを話した。今回のツアーではその新しいアルバムの中から「君がいなくちゃ」と「優しい闇」の2曲を披露した。「君がいなくちゃ」は佐野元春が十代の頃に作った曲で新たに書いた詞を付けて完成したという。確か、2000年前後に山弦のラジオ・プログラムで、小倉博和がゲストとして呼んだ佐野元春を前にして歌ってみせて、作った本人を驚かせた曲だと思う。まだ佐野元春が学生の頃に作って、通っていた学校の学生寮で流行って、それが遠く高松で暮らす小倉博和の耳に届いたという話だ。一方で「優しい闇」はロックンロール・ナンバーで"帰り道をなくしてしまってるのを知らずに"という歌詞が、ボブ・ディランの「Like A Rolling Stone」の一節、No Direction Homeのくだりを髣髴とさせる。 新曲に続いて「ボヘミアン・グレイブヤード」が披露されてライヴは後半に突入。「約束の橋」について佐野元春は最初にシングルが出た1989年はオリコン・チャート20位だったが、1992年にテレビ(いわゆる月9)の主題歌になったらNO.1になった(佐野元春にNO.1ヒットはないはずなので調べたら、「約束の橋」のニュー・ヴォーカル、リミックス・ヴァージョンのシングルはオリコン・チャート4位)。だったら最初に出たときに聴いてくれよというふうな話をした。「Someday」については「僕が曲を書いて、みなさんの中で成長して、みなさんの曲になった。でも、ちょっと待って。やっぱり僕の曲だ。やっぱり僕の曲だ! でもみんなの曲だ」とこのところ定番化した曲紹介をして歌った。誰が書いたではなく作者アノニマスでも聴き継がれてフォークロアになるのが理想だという話を佐野元春はインタビューでもよくしている。 「みんなまだ足、腰、だいじょうぶ?」と佐野元春は聴衆に語りかける。ファンのコア層はもう五十代に差し掛かる。彼らの子どもたちのためにチケット代のキャッシュバックを導入するなどの試みも行っている。今回はライヴハウスが中心のツアーなのでそうした制度はなかったようだが。「コヨーテバンドは素晴らしいパーティ・バンドだ。みんなのために演奏するよ」と言って「アンジェリーナ」。アンコールでは「ぼくら日本でいちばんのパーティ・バンドだと思ってる」と佐野元春は話して景気よく「Night Life」と「So Young」。ラジオについて書いた曲「悲しきRadio」の演奏前には、'80年代にNHK-FMでやっていた「Motoharu Radio Show」と2009年に復活した「Motoharu Radio Show Again」について触れて、「今は休んでますが、またいずれ何処かで再開したい。でなきゃぼくらは何を聴いたらいいのかわからなくなっちゃう。僕の経験が少しでも役立つならいい曲を紹介したい」と話した。 「人は何かを探し続けて生きている」と佐野元春は聴衆に語りかけた。その通りかもしれない。「成長」というのは佐野元春のソングライティングにおいて大きなテーマのひとつだ。新曲の"帰り道をなくしてしまってるのを知らずに"というフレーズに心の痛みを感じたのは、この曲が「sweet 16」の流れを汲んでいて、若さの代償を支払ってるように思えたからだ。生きるということは常に前を向いて歩いてゆくだけではなく、ときどき後ろを振り返ってみることも大事なのだと思う。そこに変わらない何かを見つけたときに、前を向いて歩きだせるんじゃないだろうか。 ■佐野元春 and The Coyote Band 2014 AUTUMN TOUR 2014年10月25日(土) フェスティバルホール 1階11列11番 佐野元春 and The Coyote Band 佐野元春(Vocals, Guitar) 小松シゲル(Drums) 深沼元昭(Guitar) 藤田顕(Guitar) 高桑圭(Bass) 渡辺シュンスケ(Keyboards) Setlist 01 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 02 スターダスト・キッズ 03 Down Town Boy 04 星の下 路の上 05 夜空の果てまで 06 Us 07 黄金色の天使 08 呼吸 09 La Vita e Bella 10 世界は慈悲を待っている 11 虹をつかむ人 12 ポーラスタア 13 スーパー・ナチュラル・ウーマン 14 詩人の恋 15 君がいなくちゃ 16 優しい闇 17 ボヘミアン・グレイブヤード 18 約束の橋 19 Someday 20 アンジェリーナ Encore 21 Night Life 22 So Young 23 悲しきRadio |
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