デビュー30周年を迎えた佐野元春が年間を通して行う記念のプロジェクトを開始した。その幕開けは東京と大阪の二会場で「アンジェリーナの日」と題されたイベントの開催。東京はライヴのほかにマスコミ向けの記者会見がセットされたものだったが、大阪はライヴ中心のイベントとして開催された。ライヴで佐野元春をサポートしたのはホーボーキングバンド。スケジュールの都合で佐橋佳幸が参加できず、元ハートランドのギタリスト、長田進が代わりのギタリストとして出演した。
開演前のステージの正面にはスクリーンがあり、20周年のときに発表されたDVD作品『MOTOHARU SANO LIVE ANTHOLOGY 1980 - 2000』から、過去のライヴの名場面が映し出されていた。開演30分前には東京で行われたクリス・ペプラー司会による会見の模様がダイジェストで公開された。そして場内が暗転、「SOMEDAY」の20周年アニバーサリーメモリアル・エディションの映像が流れた。佐野元春のデビューからの足跡をアーカイヴ映像で振り返りながら、聴衆はリズムに合わせて手拍子をして楽しんでいた。ほどなくホーボーキングバンドが現れて、曲が終わると英語のアナウンスが入った。よく聞き取れなかったが「Ladies
and gentalmen, Here is DaisyMusic performing artist MOTOHARU SANO and THE HOBO KING BAND！」と言ってたようだ。ライヴはこのようにしてはじまった。
ライヴは2006年に行われた「星の下 路の上」ツアーのように'80年代の楽曲を中心に据えていた。ほとんどの楽曲がオリジナルのアレンジで披露されたため、佐野元春がオリジナルのキーで歌っていたのが印象的だった。来日公演中のディランの「風に吹かれて」をカヴァーした以外は、これといった特筆すべき演奏はなかったと思う。個人的にはファンク・ロック色を強めた「Complication Shakedown」が素晴らしいと思った。混沌とした現実に対峙していると感じて鳥肌が立った。「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」はホーボーキングバンドによるジャム・ロック・ヴァージョンで、興に乗ったグルーヴィーな演奏がよかった。
中盤になると佐野元春の声量も少し落ちてきたように感じた。間の悪いことに「約束の橋」ではステージが明るくなり、「さあ、みんなで一緒に歌いましょう」みたいな演出になったのには醒めてしまった。続く「Wild Hearts」では居場所がなくて困ってしまった。「Rock & Roll Night」も冷静な気持ちのままで聴いていた。ただ「SOMEDAY」のイントロで佐野元春の表情が変わったのを見て気持ちが動いた。佐野元春は微笑を浮かべ客席を見渡していた。なんて純粋な目をしているんだろうと思った。僕はそのとき自分の人生を思った。「New Age」はハートランド・ヴァージョンだったが、吹っ切れたようにシャウトする佐野元春に目を見張った。
佐野元春はロックンロール一直線でライヴを貫き通した。それは正に佐野元春そのものだったように思う。佐野元春は最後に「僕の情熱が消えるまでみんなに僕の音楽をプレゼントしたい」と話した。そしてこの次の30周年公演は今までやった最も大きな会場で会おうと約束した。夢みたいな話だと思ったが、それもまたいいんじゃないかと、そんな気がした。
2010年3月24日(木) なんばHatch
1階 整理番号476番
佐野元春(Vocal, Guitar）
古田たかし(Drums)
井上富雄(Bass)
Dr.kyOn(Keyboards)
山本拓夫(Saxophone, Flute)
大井'スパム'洋輔(Percussion)
長田進(Guitars)
Set List
01 君をさがしている(朝が来るまで)
02 Happy Man
03 Down Town Boy
04 Heart Beat(小さなカサノバと街のナイチンゲールのバラッド)
05 誰かが君のドアを叩いている
06 99 Blues
07 Complication Shakedown
08 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日(H.K.B. Version)
09 Blowin' In The Wind
10 約束の橋
11 Wild Hearts
12 Rock & Roll Night
13 SOMEDAY
14 New Age
15 Individualists
Encore
16 So Young
17 悲しきRadio
18 アンジェリーナ
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