ナポレオンフィッシュと泳ぐ日限定編集版

	ナポレオンフィッシュと泳ぐ日限定編集版 SONY MUSIC DIRECT（MHCL1325-1327) オリジナル・リリース　2008.6.4 チャート最高位50位　佐野元春アーカイヴ・シリーズ第6弾。エピック・レコード時代に残した作品の中から今回はオリジナル・アルバム6枚目として1989年にリリースされた『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』の再発盤を完全生産限定で発売。　2CD+1DVDに112ページのブックレットをセットしたパッケージで、CDは2005年リマスタリングのオリジナル盤を1枚目に、アルバム未収録のシングルのカップリング曲や未発表曲、ハートランドのデモ・ヴァージョンなどを2枚目に収録している。DVDは1989年8月に横浜スタジアムで行われたライヴを収録した『横浜スタジアム'89・夏』となっている。　アルバム『Cafe Bohemia』から2年半のインターバルが空いてリリースされた『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』。当時の日本の音楽シーンでは佐野元春フォロワーの台頭やバンド・ブームがあり、マーケットも成熟して、佐野元春イディオムの楽曲がヒットする世の中になっていた。そんな中で佐野元春はというと相変わらず、ブルース・スプリングスティーンの真似をしているだけだとか、スタイル・カウンシルの曲をパクってるとかいう批判を受けていた。佐野元春が『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』で提示したのはそういった批判の回答となる文学的な傾向の強いロック音楽だった。　佐野元春は独自の比喩、慣用句を曲の中に入れて歌う音楽家だ。その比喩表現は歌詞を見ただけでは半分の効果も得られない。メロディが付いてサウンドが鳴り、そして佐野元春が歌うことによって有効となる。例えば「新しい航海」には"電気的なバレンタイン"とか"欲望のボルケイノ"というラインがある。字面だけ読むと理解に苦しむ表現だが、しかし、これが歌の中で表現されると感覚的に理解を深めて心の琴線に触れるのだ。　佐野元春はそうした言語表現を使って曲を書く音楽家だ。ブルース・スプリングスティーンとかスタイル・カウンシルの文脈で佐野元春を聴いていては佐野元春の本質を見失ってしまう。佐野元春は『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』で新たな文体を獲得した。そしてそれはおそらく誰も真似することができない個性的なものだっだ。　20年近い歳月が経って振り返ると『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』はエッジの効いた、ブリティッシュ・ロックを体現したサウンドであったが、ブリンズレイ・シュワルツとアトラクションズが中心となったバンドの音は時代の潮流の音ではなかった。ただ、それは佐野元春があらかじめ意図していたことであるのだろう。東京でのハートランド・セッションでレコーディングした楽曲をお蔵入りにして、ひとり英国に渡り、無名ともいえるプロデューサーを立てて、佐野元春が行ったのは原点回帰だといえるのではないだろうか。　Disc 2の「RARE TRACKS」はハートランド・セッションズと未発表曲「枚挙に暇がない」が目玉。シングルのカップリング曲でアルバム・アウトテイクの「風の中の友達」、「君が訪れる日」、「水の中のグラジオラス」の収録が見送られている。それは「ハートランド・セッションズとの統合、兼ね合いが悪いので」という理由からだが、収録時間が31分48秒と短いので全体として物足りなさが残る。　ハートランド・セッションズは「新しい航海」、「シティチャイルド」、「愛のシステム」、「雪 -あぁ世界は美しい」の4曲。'80年代当時"ネオサイケ"と呼ばれていたサウンドを思い起こさせるポップでサイケデリックな演奏だ。出だしのカウントが謎めいている「新しい航海」はエンディングで"ヨーレイヒ～"と佐野元春のヨーデルが聴ける。　佐野元春がその存在すら忘れていたという「枚挙に暇がない」は英国録音のスカ・ナンバー。"どうする事もできない/どうする事もできない/こんなバカげた世界は/枚挙に暇がない"と皮肉な視点で世相を斬っているが、スカの軽快なリズムに乗って"マイキョッ"と叫ぶあたりとてもユーモアに溢れている。　スタジオ・ライヴは1991年春、WOWOW開局記念の番組『Goodbye Cruel World』からで、ハートランドによるアンプラグド・ライヴのパフォーマンス。ここに収録された「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」、「ジュジュ」、「愛のシステム」の3曲はシングルのカップリングとして既発表されている。『Goodbye Cruel World』からは『No Damage II』に「99ブルース」、『The Golden Ring』には「Young Bloods」が収録されているものの、この5曲以外は公式未発表となっているだけに完全版DVDでの発売が望まれる。「モスキート・インタリュード」を挿んでの「雪 -あぁ世界は美しい」はアンプラグド・ライヴの流れを汲む演奏で素晴らしい。　DVD『横浜スタジアム'89・夏』は今回初公開となるライヴ映像。熱の入ったハートランドの演奏は今見ても興奮する。特典映像として入ってる「99ブルース」は"警察が少しずつ強くなる/戦う前に潰される/どこへゆくデモクラシー/どこへゆく自由"という歌詞が入ったヴァージョン。このナポレオンフィッシュ・ツアーがはじまる直前に中国で天安門事件があった。おそらくそれについて触れたと思われる。当時の時代背景を知った上で見ると、特典映像の曲「シェイム」や「月と専制君主」なども興味深く感じられる。
●Disc 1[ORIGINAL TRACKS] 01 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 02 陽気にいこうぜ 03 雨の日のバタフライ 04 ボリビア -野性的で冴えている連中 05 おれは最低 06 ブルーの見解 07 ジュジュ 08 約束の橋 09 愛のシステム 10 雪-あぁ世界は美しい 11 新しい航海 12 シティチャイルド 13 ふたりの理由 ●Disc 2[RARE TRACKS] 01 新しい航海（The Heartland demo version） 02 シティチャイルド（The Heartland demo version） 03 愛のシステム（The Heartland demo version） 04 愛することってむずかしい（Album outtake） 05 枚挙に暇がない（Unreleased） 06 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日（Studio live mix） 07 ジュジュ（Studio live mix） 08 愛のシステム（Studio live mix） 09 モスキート・インタリュード（Album outtake） 10 雪 -あぁ世界は美しい（The Heartland demoversion） ●DVD[横浜スタジアム'89・夏] 01 新しい航海 02 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 03 シティチャイルド 04 ふたりの理由 05 愛することはむずかしい 06 ボリビア -野性的で冴えてる連中 07 愛のシステム 08 俺は最低 09 ジュジュ BONUS TRACK 10 シェイム -君を汚したのは誰 11 ストレンジ・デイズ -奇妙な日々 12 月と専制君主 13 99ブルース 14 ハッピーマン
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