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佐野元春 and The Hobo King Band Billboard Live 'Smoke & Blue 2019' |
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| 約一年4ヶ月ぶりに開催されたSmoke & Blue。2012年にはじまったこのシリーズも8年目を迎え(通算では6回目)、今回初めて2011年のセルフカバー・アルバム『月と専制君主』と昨年の『自由の岸辺』のレコーディング・メンバーで行われた。Dr.kyOn、古田たかし、長田進、井上富雄、彼らは第三期のホーボーキングバンドということである。 佐野元春は現在、ふたつのバンドで活動していてホーボーキングバンドはルーツ・ロック、コヨーテバンドはモダン・ロックと演奏形態を分けている。そういえばこういうふうに分けてると表明したのはつい最近のことで何年も前からそれで活動していたわけではない。 ホーボーキングバンドはアルバム『FRUITS』のレコーディング・セッションに参加したメンバーを中心にして結成された。インターナショナル・ホーボーキングバンド・フィーチャリング佐野元春と名乗っていた時代を経て、西本明、Dr.kyOn、佐橋佳幸、井上富雄、小田原豊にメンバーが固定したのは1997年。アルバム『THE BARN』のレコーディングとツアーまでこのメンバーで行われている。 2000年の佐野元春デビュー20周年後にメンバー・チェンジがあり、古田たかし、Dr.kyOn、佐橋佳幸、井上富雄、山本拓夫の編成になり、2008年の春まで活動した。ご存知のように山下達郎がライヴ・ツアーを再開したところで、佐橋佳幸の参加が限定的となり、その頃から長田進がギターで参加するようになった。前述のとおりアルバム『月専制君主』は古田たかし、長田進、Dr.kyOn、井上富雄が中心になりレコーディングされた。余談だがアルバム『自由の岸辺』には佐橋佳幸と山本拓夫がメンバーだった2001年のレコーディング「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」が収録されている。 今回のSmoke & Blueはそれまでのメンバーからチェロの笠原あやのに代わって長田進が初参加。これが過渡期の限定的な処置なのか新しいホーボーキングバンドの実質顔見世公演だったのか今の段階ではわからないが、第三幕の幕開けだとしたら大成功でいい船出になったと思う。 Smoke & BlueではDr.kyOnの弾くアコースティック・ピアノが楽曲の持つ豊潤な魅力を引き出す。出だしはフォーキーなタッチの「ジュジュ」と「夏草の誘い」から。ハモンド・オルガンもまたDr.kyOnの演奏で楽曲にグルーヴをもたらすのだが、それはまた別の機会に。 さて、今回の公演では『月と専制君主』と『自由の岸辺』を演奏するセットリストを組んだそうだが、このライヴ・シリーズで生まれた曲「トーキョー・シック」も披露された。来年の東京オリンピックの個人的なテーマ・ソングだと話していて盛り上げて行きたい様子だった。ちなみに公式のテーマ・ソングはくるりが担当している。 二枚のアルバムのほかにも「希望」があったり「愛のシステム」があったり「Complication Shakedown」や「ドライブ」と縦横無尽な選曲。長田進の参加によりルーツ・ロックの色が濃くなり、ブルースやニューオリンズ・サウンドはホーボーキングバンドならではの味わいだった。佐野元春もウーリッツァーでグリッサンドしたりしてアグレッシブな演奏を繰り広げた。 ■佐野元春 and The Hobo King Band Billboard Live ‘Smoke & Blue 2019’ 2019年3月7日(木) ビルボードライブ大阪 1st Stage(入場整理番号14番) 佐野元春(Vocals, Guitar) 古田たかし(Drums) 井上富雄(Bass) Dr.kyOn(Keyboards) 長田進(Guitar) Set List 01 ジュジュ 02 夏草の誘い 03 希望 04 君がいなければ 05 トーキョー・シック 06 エンジェル・フライ 07 C'mon 08 Complication Shakedown 09 愛のシステム 10 Happy End 11 僕にできることは 12 ドライブ 13 最新マシンを手にした子供達 14 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 フランスのノートルダム大聖堂が大火に見舞われたのは4月15日のことだった。大阪ではじまり大阪で終わった'Smoke & Blue 2019'の最終公演からほんの数日後に起こった惨事だった。「セーヌ川のほとり、夜友だちと歩いてたときに書いた曲」、佐野元春は「月と専制君主」をそんなふうに紹介した。同様に「日曜の朝の憂鬱」はニューヨークのセントラルパークで書いたそうだ。旅先で曲を書くことが多いのだという。 今回の'Smoke & Blue 2019'、セットリストの前半に披露された「ジュジュ」、「日曜の朝の憂鬱」、「君がいなければ」は不在をテーマにした楽曲。中でも個人的に心が揺さぶられたのは「君がいなければ」。佐野元春によるグレッチのカッティング、長田進の哀愁を帯びたエレクトリック・ギターの音色。失った両親への思いが心によぎった。 1984年のアルバム『VISITORS』に言及し、「インターネットがなくてよかった、あったら大炎上していた」と話し、「でも時が経ってヒップホップやラップは誰もが知る音楽になり、今は安心して歌えるようになった」と佐野元春は言った。「Complication Shakedown」は現在の分断された社会や世界情勢のことを歌っているように感じられた。演奏もキーボードのソロからベースのソロへと続きヒートアップした。今回のメンバーでなければ表現できなかっただろう。 最後にメンバー紹介を行ったときパーカッションの吉川清海の名前があった。ときどき佐野元春のライヴに参加しているが紹介されたのはこれがはじめてのこと。そして僕も全く知らなかったのだが、このツアーが佐野元春にとって平成最後になるツアーだった。4月14日の大阪公演は平成最後のライヴだということ。ライヴのいちばん最後にやった「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」の"Good night to the world"というフレーズにかかっているんじゃないかと佐野元春は言った。アルバム『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』がリリースされたのは平成元年のこと。時を経て平成の終わりに歌ったのが「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」。ひとつの時代を顧みることが今回のテーマだったのかもしれない。 ■佐野元春 and The Hobo King Band Billboard Live ‘Smoke & Blue 2019’ 2019年4月13日(土) ビルボードライブ大阪 2nd Stage(カジュアル・シート D1-1,2番) 佐野元春(Vocals, Guitar) 古田たかし(Drums) 井上富雄(Bass) Dr.kyOn(Keyboards) 長田進(Guitar) Set List 01 ジュジュ 02 月と専制君主 03 日曜の朝の憂鬱 04 君がいなければ 05 トーキョー・シック 06 クエスチョンズ 07 Complication Shakedown 08 C'mon 09 愛のシステム 10 Happy End 11 僕にできることは 12 夜に揺れて 13 最新マシンを手にした子供達 14 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 ■佐野元春 and The Hobo King Band Billboard Live ‘Smoke & Blue 2019’ 2019年4月14日(日) ビルボードライブ大阪 1st Stage(入場整理番号26番) 佐野元春(Vocals, Guitar) 古田たかし(Drums) 井上富雄(Bass) Dr.kyOn(Keyboards) 長田進(Guitar) Set List 01 ジュジュ 02 月と専制君主 03 日曜の朝の憂鬱 04 君がいなければ 05 トーキョー・シック 06 エンジェル・フライ 07 クエスチョンズ 08 Complication Shakedown 09 愛のシステム 10 Happy End 11 僕にできることは 12 ドライブ 13 最新マシンを手にした子供達 14 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 |
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