3ヵ月連続で行われるBillboard Live 'Smoke & Blue'の大阪公演を4月10日に聴きに行った。今回は平日に行われるので仕事の都合もあって午後9時半スタートの2nd Stageに参加した。先月に引き続いての公演ということで雰囲気がよく、場内が暗転してオープニング・テーマがながれると、開演を待ちわびるオーディエンスから手拍子が起きて、幕開けから大いに盛り上がった。セットリストは3月の公演と同じで変更はなかったが、東京公演を間に挟んで行われたライヴなので、バンドの演奏も前回よりさらに磨きがかかり素晴らしかった。
遅れていた春の訪れとともに新しい季節が巡ってきた。「だいじょうぶ、と彼女は言った」と「Happy End」は春の歌というわけではないが、この季節に聴くと格別の味わいがあるように思う。続けて聴くとまるで連作のように互いの楽曲と呼応する。
「ジュジュ」はセルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』に収録されたていたので、2010年の全国クラブ・サーキット・ツアー「ソウルボーイへの伝言」から再演されることになった。今回のビルボードライブ公演は佐野元春のシンガー・ソングライターとしての面をクローズアップするというテーマがあり、古い楽曲を掘り起こして今の時代に通用するかどうかという試みがなされている。
「ジュジュ」は今の時代に響く言葉の輝きを放ち聴く者の心を揺らす。その意味で言えばこの月間定例ライヴはアルバム『月と専制君主』を主題にしたライヴだといえるかもしれない。
さて、佐野元春が生まれた1950年代の半ば頃、両親がよくダンスホールに通っていたそうだが、「トーキョー・シック」はその当時のダンスホールでかかっていた音楽をイメージして書いたという。ちょうどその頃の日本のポップ音楽をMRSで3月に特集していたが、自分が生まれた頃の流行歌に思いを馳せる境地とはどういうものなのか。自分の音楽体験を究極まで遡り、クリエイトした新曲は1950年代半ばに全盛だったラテン音楽の影響が感じられた。
「天国に続く芝生の丘」はアンサンブルに変更があってDr.kyOnのマンドリン演奏がなくなった。サザン・ロックの「ドライブ」が回を重ねるごとに熱狂的な支持を得るようになった。佐野元春のパフォーマンスにオーディエンスが沸きあがる。親密な空間で行われるライヴならではの盛り上がり。「デトロイト・メドレー」はハートランド時代によく演奏していたミッチ・ライダーとデトロイト・ホイールズのメドレーだというMCがあった。
■佐野元春and The Hobo King Band Billboard Live 'Smoke & Blue'
2012年4月10日(火) ビルボードライブ大阪
2nd Stage(自由席整理番号9番)
佐野元春 and The Hobo King Band
佐野元春(Vocal, Guitar, Keyboards)
古田たかし(Drums)
Dr.kyOn(Keyboards)
井上富雄(Bass)
笠原あやの(Cello)
Setlist
01 Please Don't Tell Me A Lie
02 It's Alright
03 マンハッタンブリッヂにたたずんで
04 だいじょうぶ、と彼女は言った
05 Happy End
06 ジュジュ
07 7日じゃたりない
08 Weekly News
09 楽しい時
10 君の魂 大事な魂
11 二人のバースデイ
12 メッセージ
13 トーキョー・シック(街に出かけようよ)
14 天国に続く芝生の丘
15 情けない週末
16 約束の橋
17 ドライブ
18 Mitch Ryder Medley
19 Bye Bye Handy Love
3月の公演は電話予約で希望していた20日の祝日の1st Stageが取れず、2nd Stageだけの参加となった。僕の予想では二日公演だから一日目と二日目で曲目を変えてくるものと思っていたが、実際は日替わりではなく1st
Stageと2nd Stageで数曲入れ替えが行われていた。予想が外れたのは残念であったものの、4月公演で1st Stageを見る機会に恵まれた。
1st Stageだけで演奏される曲は「バルセロナの夜」と「虹を追いかけて」と「遠い声」と「明日を生きよう」。ステージの中盤に組み込まれる構成だ。どの曲もステージにかけられることの少ない楽曲で、「虹を追いかけて」はもう四半世紀ぶりかもしれない。アルバム『The Essential Cafe Bohemia』のセルフ・カヴァー・ヴァージョンよりもオリジナルに近いアレンジだったが、決して古くさいものではなかった。今の佐野元春の声で聴くと深みが増した感じがした。
Billboard Live 'Smoke & Blue'はセルフ・カヴァー・アルバム『月と専制君主』を主題にしたライヴだという僕の考えはより確信めいた思いになった。アルバム発売直後のデビュー30周年記念ツアー Part.3 「All Flowers
In Time」ではオールタイムベスト的なセットリストにしたが、今回は『月と専制君主』にも取り上げられなかった楽曲を中心にした構成で、ソングライターとしての佐野元春を世に問うかたちにしている。実際に僕は久しぶりに聴いた楽曲何曲かに心が揺れた。
東京での休日に聴く「トーキョー・シック」もよかったが、対比となるような「情けない週末」と続けて聴けたのがこの東京公演の収穫だった。アンサー・ソングみたいにも聴こえるし、明と暗というふうにも受け取れる。曲順による魔法が感じられた一瞬だった。
余談だが佐野元春の楽曲としては異色な曲調の「トーキョー・シック」は、今回の東京公演の直後、雪村いづみを迎えて、前田憲男の編曲、指揮でビッグバンド形式によるレコーディングが行われたと発表された。MRSでは雪村いづみをゲストに迎えて特集が二週(3/13, 20)に渡り組まれ、5月公演は雪村いづみをゲストに迎えて行われることも発表されている。雪村いづみが歌うことを想定して書いた楽曲だとしたら、こうした世代を超えたコラボレーションが実現したというのは本当に意義のあることだと思う。
■佐野元春and The Hobo King Band Billboard Live 'Smoke & Blue'
2012年4月15日(日) ビルボードライブ東京
1st Stage(カジュアルシート 5B-6)
佐野元春 and The Hobo King Band
佐野元春(Vocal, Guitar, Keyboards)
古田たかし(Drums)
Dr.kyOn(Keyboards)
井上富雄(Bass)
笠原あやの(Cello)
Setlist
01 Please Don't Tell Me A Lie
02 It's Alright
03 マンハッタンブリッヂにたたずんで
04 だいじょうぶ、と彼女は言った
05 Happy End
06 ジュジュ
07 7日じゃたりない
08 バルセロナの夜
09 虹を追いかけて
10 君の魂 大事な魂
11 二人のバースデイ
12 遠い声
13 明日を生きよう
14 トーキョー・シック(街に出かけようよ)
15 情けない週末
16 約束の橋
17 ドライブ
18 Mitch Ryder Medley
19 Bye Bye Handy Love
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