2004年12月10日（金） グランキューブ大阪メインホール
1階Af列9番
Elvis Costello(Vocals, Guitars)
Steve Nieve(Keyboards)
Pete Thomas(Drums)
David Faragher(Bass)
のっけから物凄い勢いで8ビートのロックンロールが演奏された。阿鼻叫喚するオーディエンス。曲が終らないうちに次の曲のイントロがかぶさってくるのでスリリングだ。今年50歳になるエルヴィス・コステロは衰えを知らない。誰も彼のようにはなれない。ほんの一瞬、音の隙間があったのは「Button
My Lip」と「Country Darkness」のあいだ。僕はようやく一息ついて聴き入った。ここまでがひとつの流れの中で演奏されたわけだ。
「Button My Lip」と「Country Darkness」は新しいアルバムからの楽曲。ニュー・アルバム『The Delivery Man』はタイトル曲「The Delivery Man」に関連した連作といった構造になっているそうだ。ただし物語性を意図的に排除するような仕掛けが施されている。「The Delivery Man」と関係しない曲も含まれているのだ。それがストーリーによってがんじがらめに縛られることから解放し、1曲1曲が心に残るようにと工夫されている。
「The Name Of This Thing is Not Love」から「Either Side Of The Same Town」がまたひとつの塊として演奏された。「Brilliant
Mistake」は"彼はアメリカの王様だった"という出だしではじまる。あるひとりの男のことを思い描きながら僕は「ブリリアントな間違い」の意味するところを想像して楽しんだ。「Either
Side Of The Same Town」は今年になって国内盤も発売された2003年ハワード・テイト奇跡の復帰作『Rediscovered』(山下達郎も大絶賛した)に提供した楽曲。コステロは新作でセルフカヴァーしている。極上の渋さに身震いした。
同じように素晴らしかったのがニック・ロウに提供したスロウ・ソングの「Indoor
Fireworks」。室内花火だと思って油断して扱うと危ない、それだって十分指をはじきとばすくらいの破壊力を秘めているのさ、という内容。もう涙が出そうなくらい美しいメロディを持った楽曲。続くカントリー・ナンバーの「My
Baby's Gone」、そして前作『North』からの感傷的な「You Turned To Me」とゆったりした楽曲の流れの中で心地よく身を委ねた。
「When I Was Cruel No. 2」のエンディングに「Watching The Detectives」のギター・フレーズがチラホラ挿入されているのに気が付いた瞬間にはゾクゾクした。そのままレゲエのリズムへと大胆に移り変わると僕は大きくのけぞった。目の前で凄いことが起こっていた。
「The Judgement」はソロモン・バーグに提供した楽曲。ドラマティックに盛り上がるメロディ。「Either
Side Of The Same Town」にしても「The Judgement」にしてもあまりに良い曲なので生で聴くと身震いしてしまう。
「Blame It On Cain」から「Uncomplicated」がまたひとつの流れの中で演奏された。グルーヴィーなバンド・サウンドでぐいぐいと押しまくるパフォーマンスに圧倒された。
アンコールはニュー・アルバム『The Delivery Man』からの楽曲が続いた。実は僕はあまりこの新作を聴いていない。というよりも1993年のブロドスキー・クァルテットとの共演盤『The
Juliet Letters』以降、腰をすえてじっくりと聴くことが少なくなってしまった。
『The Delivery Man』からの流れの中で「Hidden Charms」だけはアルバム外の楽曲だった。ウィリー・ディクソン作でハウリン・ウルフが録音したことで知られるナンバー。その後は新作からルシンダ・ウイリアムスとデュエットした「There's
A Story In Your Voice」へと続いた。その直後間髪いれずに演奏されたのはブリンズレー・シュワルツのカヴァー「Peace,
Love And Understanding?」。今年最もたくさん聴いたコステロの曲だ。当然歌いまくった。ガンガンと。今年はイラク人捕虜の虐待やファルージャでの武力勢力一掃攻撃において怪我をした無抵抗のイラク人を射殺する行為があった。いくら戦争時だからといって許されるべきものなのだろうか。僕は怒りを覚えた。「自衛隊の駐屯する地域は非戦闘地域だ」なんて答弁する小泉首相には、上戸彩のCMみたいに「この口かぁ〜」ってやりたくなる。愛と平和と相互理解、その何がおかしいというのか。ピース。
撃ったばかりの銃がまだ温かいようにコステロがステージに置いて行ったギターからはまだ「キーン」という張りつめた音が鳴っていた。ライヴを体験した後で僕はニュー・アルバムを改めて何度か聴いた。昨年も同じことをした。その昔、コステロのアルバムは噛みしめる度に味が出るスルメのようだと思っていたことがあった。一枚のアルバムを何回も噛みしめるようにして聴き続けたものだ。今は全くそんな行為をやっていない。年齢的なものからくる体力不足なのかもしれない。もう一度昔のようにコステロの音楽と向き合ってじっくりと聴いてみようと思った。
Set List
01 Blue Chair
02 45
03 Beyond Belief
04 Radio Radio
05 Button My Lip
06 Country Darkness
07 The Name Of This Thing is Not Love
08 Brilliant Mistake
09 Either Side Of The Same Town
10 Sulky Girl
11 Next Time 'Round
12 Indoor Fireworks
13 My Baby's Gone
14 You Turned To Me
15 When I Was Cruel No. 2
16 Watching The Detectives
17 The Judgement
18 Blame It On Cain
19 High Fidelity
20 Uncomplicated
Encore
21 The Delivery Man
22 Monkey To Man
23 Bedlam
24 The Monkey
25 Hidden Charms
26 There's A Story In Your Voice
27 (What's So Funny 'Bout) Peace, Love And Understanding?
『The Delivery Man』を購入する。
『Rediscovered』を購入する。
『Don't Give Up On Me』を購入する。 |