|
Brian Wilson SMiLE TOUR |
|
2005年2月3日(木) 大阪厚生年金会館大ホール 1階U列48番 Brian Wilson (vocals, keyboards, bass) Jeffrey Foskett (vocals, guitar, percussion, whistles, hammer) Darian Sahanaja (vocals, keyboards, mallets) Probyn Gregory (vocals, guitar, keyboards, brass, tannerin, whistles) Nick Walusko (vocals, guitar, bullhorn, eye-patch) Nelson Bragg (vocals, percussion, whistles, drill) Jim Hines (drums, vocals), Bob Lizik (bass), Paul Mertens (woodwinds, harmonica, whistles) Scott Bennett (vocals, keyboards, mallets, percussion, saw) Taylor Mills (vocals, percussion, tool belt) Stockholm Strings 'N' Horns 『SMiLE』は『Pet Sounds』(1966年)に続くアルバムとして製作が開始された。けれどもブライアン・ウィルソンの精神状態が不安定になり完成間近で投げ出されることになった。以後37年に渡りロック・ミュージックの世界で『SMiLE』は悪夢として語られることになった。 1999年から再開したライヴ・ツアーの大成功でブライアンは完全な復活を遂げたわけだが、2001年のPet Sounds Tourでは『Pet Sounds』の全曲を披露するという画期的な内容が話題になった。そのPet Sounds Tourの後半には『SMiLE』に収録される予定だった楽曲の披露があったため、当然のながれとして、今度は『SMiLE』をライヴで披露するということが模索されるようになった。 ただ『SMiLE』は未完成であったため、正確な歌詞がブライアンの手元にはなかったり、そのため曲のメロディ・ラインがあやふやだったりした。この問題をクリアするためにブライアンは作詞者のヴァン・ダイク・パークスに連絡をとり歌詞を教えてもらうことにした。この二人の邂逅は当初ライヴで披露するのが目的だったプロジェクトを変換させることになった。未完だった『SMiLE』のアルバム製作へと発展したのだ。 そうして完成したブライアンの『SMiLE』は2004年2月20日にロンドンのロイヤル・フェスティバルホールで初演された。当日のライヴでブライアンは相当ナーバスになっていたそうだ。誰かが肩を抱いて「大丈夫、大丈夫」と励ましてないと、そのまま逃げ出してしまいそうなくらいにピリピリとしていたという。だが、ロンドンのオーディエンスは盛大なアプローズでブライアンたちを迎えた。それを目の当たりにしたブライアンは幸せな気持ちになったという。6年間ブライアンとともに活動したダリアン・サハナジャもブライアンは今がいちばん幸せそうだと話しているらしい。 ライヴはバンドのメンバーがステージの一角に集まり、まるでストリート・ライヴをやっているようなアコースティック・セットで幕が開いた。ブライアンを中心にそれぞれが肩を寄せ合い、そして声を重ねた。ストリート・コーナー・シンフォニーといった言葉がぴったりとするようなオーガニックでラフな演奏だ。それは会場全体を温かくふくよかなヴァイブレーションで包んだ。 バンドのメンバーがひとり、またひとりと抜け各々の楽器の前に散らばり、ブライアンがキーボードの前に座ると、そこからエレクトリック・セットへとライヴは進行した。ビーチボーイズの初期の名曲から最新ソロ・アルバム『Gettin' In Over My Head』の曲まで次々と繰り出された。ブライアンのしわがれた声に、ある人はイノセンスを感じるんだという。僕が今、そこから感じ取れるのは彼のナイーブさだ。だから僕にとってとりわけ感動的だったのは「God Only Knows」と「Forever」だった。 第二部は『SMiLE』セット。3つのパートはそれぞれがアメリカの歴史に基づいた神話のようにも思えるし、そんなことはなく、ただのドラッグ・ミュージックとして聴いたほうがいいのかもしれない。僕の友人によればそれはキチガイ音楽だと言う。決して一筋縄で理解できるものではない。ライヴで聴けば謎が解けるかもしれないと思ったが、実際のところは今もよくわからないままだ。「Cabin Essence」の"何度も何度もカラスが鳴いて、トウモロコシ畑が見えてくる"のリフレインはやはり不可思議だった。バンドが第2楽章の最終曲「Surf's Up」を演奏すると拍手の波が静かに広がった。最高に美しいスロウ・ソングに僕は浸った。 ステージ上のバンド、そしてブラスとストリングスのメンバーは演奏を楽しんでいた。曲に関連したS.E.、動物の鳴き声(「Barnyard」)、工具(「Workshop」)や野菜(「Vega-Tables」)といった小道具を用いていた。また、「Mrs. O'Leary's Cow」では消防士のヘルメットや、燃え立つ炎に火消しのパフォーマンスといった演出があった。それ自体が伝説的ではあったが、当時の悪夢とは無縁の陽気な明るさを感じた。 第3楽章の最終曲「Good Vibrations」でも盛大なアプローズがあった。ブライアンは「アリガト」と応えた。本当にアメージングな体験だった。 アンコールは'60年代初期の曲で怒涛のヒット・パレード。ジェフリー・フォスケットの「Sing Along !」で大いに盛り上がった。そして最後の曲は「Love And Mercy」。ブライアンは「この曲を親友のチェロリスト、マーカス・サンドランドに捧げる」と言った。このツアーに参加していたマーカス・サンドランドはクリスマス休暇にタイを訪れた。そして12月26日以降行方不明のままだ。 ブライアンは現在62歳で、おそらく今回が最後の来日公演になるだろうと言われている。シリアスな顔というか無表情のまま奇妙な振りをつけて歌ったり、動きが変だったりして、見ていてドキドキするのは毎度のことだったが、演奏は本当に素晴らしかった。そして、よい音楽は決していつの時代でも古くはならないんだ、そう実感し僕は感慨深い思いになった。 『Brian Wilson presents SMiLE』を購入する。 「Good Vibrations」(MAXI SINGLE)を購入する。 『Gettin' In Over My Head』を購入する。 SetList Set #1 (acoustic section) 01. Surfer Girl 02. Wendy 03. Add Some Music To Your Day 04. Please Let Me Wonder 05. Drive In 06. And Your Dream Comes True 07. You're Welcome (full band section) 08. Sloop John B 09. Desert Drive 10. Dance, Dance, Dance 11. Hawaii 12. California Girls 13. God Only Knows 14. Forever 15. Good Timin' 16. I Get Around 17. Sail On Sailor 18. Marcella Pause Set #2 (SMiLE section) 19. Our Prayer/Gee 20. Heroes And Villains 21. Roll Plymouth Rock 22. Barnyard 23. Old Master Painter/You Are My Sunshine 24. Cabin Essence 25. Wonderful 26. Song For Children 27. Child Is Father Of The Man 28. Surf's Up 29. I'm In Great Shape/I Wanna Be Around/Workshop 30. Vega-Tables 31. On A Holiday 32. Wind Chimes 33. Mrs. O'Leary's Cow 34. In Blue Hawaii 35. Good Vibrations (encore #1) 36. Do It Again 37. Help Me Rhonda 38. Barbara Ann 39. Surfin' U.S.A. 40. Fun Fun Fun (encore #2) 41. Love And Mercy |
||
|home| |
||