|
Brian Wilson Pet Sounds Tour Japan 2002 |
|
2002年2月27日(水) NHK大阪ホール 1階Rブロック3列005番 Brian Wilson (vocals, keyboards, bass), Jeffrey Foskett (vocals, guitars), Jim Hines (drums, vocals), Bob Lizik (bass), Paul Mertens (flute, alto and baritone saxophones, piccolo, harmonica), Darian Sahanaja (vocals, vibes, keyboards), Andy Paley (vocals, percussion) Probyn Gregory (vocals, guitar, keyboards, french horn, trumpet tannerin), Nick Walusko (vocals, guitar), Scott Bennett (vocals, keyboards, vibes, percussion), Taylor Mills (vocals, percussion), 今回の来日公演の一報は衝撃的だった。それはアメリカで、ポール・サイモンとの双頭ツアーを行っていたブライアン・ウィルソンが、2000年秋に開催したアルバム『Pet Sounds』(1966年)の全曲演奏するライヴを、日本で再び行うとされていたからだった。 そのアメリカで2000年秋に行われたライヴは"Pet Sounds Symphony Tour"といい、ブライアン・ウィルソン・バンド(ワンダーミンツ + ジェフリー・フォスケットといった布陣)とオーケストラとの共演、ゲストにヴァン・ダイク・パークスなどが出演した。萩原健太氏が自身のサイトKenta's...Nothing But Pop !で、ハリウッドボウル公演を観に行ったと書いていたが、それがまさか日本で観られることになるとは思ってもみなかったのだ。 一度はドラッグによる精神障害で、再起不能といわれていたブライアン・ウィルソンだが、1999年のBrian Wilson Japan Tour 1999や2000年に発表されたライヴ・アルバム『Live At Roxy Theatre』などで聴いたブライアン・ウィルソン・バンドの素晴らしさに感銘を受けていたので、もう今や何も心配することなく楽しめると思っていた。ところが2001年の9月下旬に予定されていた来日公演は、アメリカ同時多発テロの影響を受けて延期され、そして世界は一転して混迷の度合いを深めて行った。そんな状況の中、ブライアン・ウィルソンは、いち早くオフィシャル・サイトでコメントを発表、日本での公演をなるだけ早く実現させることを約束し、最後に"Love & Mercy"と言葉を結んだ。 このコンサートは2部構成になっており、第1部はビーチボーイズの活動を総括したような選曲で、ブライアン・ウィルソンのソロからは7曲目の「Your Imagination」と14曲目の「Desert Drive」(未発表曲)だけが披露された。 1曲目はイントロデュースといった感じでベアネキッド・レイディーズの「Brian Wilson」をカバーした。"ブライアン・ウィルソンのようにベッドで横になって"と唄いながら、バンド全員で腕をブライアン・ウィルソンのほうに伸ばして紹介し、そのまま「'Til I Die」へとなだれ込んだ。「'Til I Die」は自らの存在の小ささと自然の雄大さを、ブライアン・ウィルソンの達観したヴィジョンとともに伝える曲。イントロのところでブライアン・ウィルソンは「Beautiful」と何度も言葉を繰り返していた。前回のツアー同様、会場の盛り上がりがすごい。声援と絶叫がブライアン・ウィルソンを奮い立てたのか、それに応えるかのように雄叫びをあげ「アリガト」と言葉を放つ姿が印象的だった。 6曲目の「The Warmth Of The Sun」で、ブライアン・ウィルソンは「ジョンF.ケネディが暗殺された夜に書いた」と話した。このメロウな曲にポール・マーティンズのハーモニカがせつなく響いた。7曲目の「Your Imagination」は1998年のアルバム『Your Imagination』のタイトルナンバー。頭をなでるようなジェスチャーを交えて唄うブライアン・ウィルソンがかわいらしい。前回のBrian Wilson Japan Tour 1999では、会場からの声援とメンバーが織りなす美しいハーモニーによって、盛りたてられた感じのブライアン・ウィルソンだったが、今回は声量もあり素晴らしいパフォーマンスだ。続く「Forever」は故デニス・ウィルソンのボーカルで知られる曲。前回のBrian Wilson Japan Tour 1999では、1998年に亡くなったカール・ウィルソンを追悼し、「Lay Down Burden」(1998年のアルバム『Your Imagination』収録曲)を唄っていたが、今回はデニス・ウィルソンを追悼して「Forever」が唄われた。スチール・ギターの音色が美しいバラードだ。 「Sail On, Sailor」では佐野元春の未発表新曲の「Sail On」を思い出していた。どちらも8分の6拍子、３連の曲で、ブライアン・ウィルソンは櫓を漕ぐジェスチャーをしていた。そんなところも佐野元春のパフォーマンスと重なる。聴きながら自然に身体を横に揺らした。 「Please Let Me Wonder」というメロウなバラードは溜息をつくほど美しい。同じくフィル・スペクターの影響が窺がえる「You're So Good To Me」と「Don't Worry Baby」が続けて披露された。ウォール・オブ・サウンド、60's Dream、夢のようなひとときだった。会場で姿を拝見した萩原健太氏は「Don't Worry Baby」がお気に入りだと、かつて語っていたことを思い出していた。今回のライヴに参加しているアンディー・ペイリーと製作した「Desert Drive」(未発表曲)は、萩原健太氏によると、この夏からレコーディングされるブライアン・ウィルソンのロックンロール・アルバムに収録する予定だとか。もちろんプロデュースはアンディー・ペイリーだそうだ。 アルバム『Friends』からの「Meant For You」と「Friends」は、アルバムの雰囲気そのままに穏やかで安らぎに満ちていた。NHK大阪ホールの最寄の駅から会場に向かうまでの道中で、「Friends」のメロディとハーモニーが頭の中で何度もながれていたので、この選曲はうれしかった。 そして未完成のアルバム『Smile』を代表する3曲の披露。前半のハイライトだ。青と白の照明が上から下にゆっくりと降りてくるのを見ながら、荘厳なコーラスが賛美歌を思わせる「Our Prayer」を聴いた。「Heroes And Villains」は、ベースが唸りをあげながらテンポアップしてゆく短いイントロのついたバージョンで、カウントが入りスタートした。パーパー、アー、トュルルル、ドゥビドゥビ、と目まぐるしく変わるコーラスのハーモニーが美しい。ヴァン・ダイク・パークスの難解な詞と、転調を繰り返すメロディが、美しいイメージを喚起させる「Surf's Up」は、今回のライヴで最も驚いた選曲だった。まさかこの曲がライヴで聴けるとは。うれしさとともに、その深遠さに心の琴線が大きく響いていた。 「Marcella」ではブライアン・ウィルソンが"Everybody, Stand Up !"とオーディエンスを促し、メドレーで「Do It Again」へと大騒ぎのなか第1部の幕は閉じられた。唄い終わるや否や、ひとりスタスタとステージを後にするブライアン・ウィルソンの姿に、一抹の寂しさと不安を抱え、複雑な気持ちになっていた。 1998年にアルバム『Your Imagination』がリリースされた時だっただろうか、渋谷陽一氏は、ブライアン・ウィルソンがリタイアしていた30年の年月は、本人にとっては存在しないようなもので、ブライアン・ウィルソンは60年代の後半を昨日のことのようにしか思っていない、だから何の衒いもなく純粋に、あの頃の音楽を現在に再現出来るのだ、というようなことを語っていた。 アルバム『Pet Sounds』(1966年)を全曲演奏する第2部。ジェフリー・フォスケットとワンダーミンツのダリアン・サハナジャがバンドを統率し指揮をとっているように見えた。多様な楽器が使われた『Pet Sounds』。「You Still Believe In Me」のバイシクル・フォン、「That's Not Me」のパーカッションと聴きどころに事欠かない。また、メロディの美しさも特筆すべきことだ。「Don't Talk」の浮遊感に溢れたメロディと「I'm Waiting For The Day」のドラマティックな展開には目を見張ったし、「God Only Knows」では、「ポール・マッカートニーが"お気に入りなんだ"と教えてくれて驚いた」と、ブライアン・ウィルソンのMCの後で唄われた。 この第2部で強く感じたのは、アルバム『Pet Sounds』のレコーディングに参加したセッション・ドラマーのハル・ブレインの影だった。ここに存在しないハル・ブレインの音が聴こえていたのだ。美しいメロディの「I Know There's An Answer」にも、多彩なリズムの展開が素晴らしい「Here Today」にも、繊細なサウンドに木魚のようなチャカポコチャカポコという音がユニークな「I Just Wasn't Made For These Times」にも。それが最も濃厚だったのは、「イチ、ニ、サン、シ」というカウントではじまった「Pet Sounds」の強烈なリズムにおいてだった。そのグルーブには圧倒された。 ブライアン・ウィルソンの無垢な想いが悲しくせつない「Caroline, No」。この曲はいつも胸に迫ってくる。多くの人たちを感動させた「Caroline, No」がアウトロの演奏に入った時、オーディエンスが次々と立ち上がり、拍手の渦が広がってスタンディング・オベーションとなった。その余韻の中レコードと同じS.E.(踏み切りの音に犬が吠え続け、列車が警笛を鳴らしながら通り過ぎる音)がながれた。 第2部の最後に披露されたのは、テルミンの音が印象的な「Good Vibrations」。席が遠くて実際にテルミンの演奏を確認できなかったが、たぶん雑誌や映画などでお馴染みのテルミンではなく、別の楽器を演奏していたように思う。みんなコーラスの部分を一緒に唄いながら、いつの間にか寄せては返す波のようなサビにハーモニーをつけていた。 アンコールはヒット・ソングのオンパレード。いうまでもなくビーチボーイズの人気のピークは60年代の前半にある。「I Get Around」でリズムにあわせて手拍子していたオーディエンスの興奮は、「Barbara Ann」でブライアン・ウィルソンがベースを手にした瞬間に最高潮へ達した。ドラムロールが続く中、バンド・メンバーが中央に集まり、一瞬ステージが暗くなったあと、スポットライトの下にブライアン・ウィルソンがベースを抱え立っていたのだ。どよめきと絶叫が交差する中、もう後は踊り続けるしかなかった。「Surfin' USA」でクロールし、「Fun, Fun, Fun」で楽しみを3段階頭上に押し上げるが如く振付し踊る。ロックンロールのビートがそれぞれの体中を突き抜けていった。 2度目のアンコール。いちばん最後は「Love and Mercy」をしっとりとブライアン・ウィルソンは歌い上げた。その声は優しくそれぞれの胸の中にとけていったようだった。 SetList 01 Brian Wilson 02 'Til I Die 03 Dance Dance Dance 04 In My Room 05 California Girls 06 The Warmth Of The Sun 07 Your Imagination 08 Forever 09 Sail On, Sailor 10 Add Some Music To Your Day 11 Please Let Me Wonder 12 You're So Good To Me 13 Don't Worry Baby 14 Desert Drive 15 Meant For You 16 Friends 17 Our Prayer 18 Heroes And Villains 19 Surf's Up 20 Marcella 21 Do It Again 休憩15分 Jeffrey Foskettがメンバー紹介 22 Wouldn't It Be Nice 23 You Still Believe In Me 24 That's Not Me 25 Don't Talk 26 I'm Waiting For The Day 27 Let's Go Away For Awhile 28 Sloop John B 29 God Only Knows 30 I Know There's An Answer 31 Here Today 32 I Just Wasn't Made For These Times 33 Pet Sounds 34 Caroline, No 35 Good Vibrations Encore 1 36 Surfer Girl 37 Help Me, Rhonda 38 I Get Around 39 Barbara Ann 40 Surfin' USA 41 Fun, Fun, Fun Encore 2 42 Love and Mercy |
||
|
|
||
| Brian Wilson Brian Wilson Japan Tour 1999 |
||
1999年7月9日（金）19:00-21:20 大阪フェスティバルホール Brian Wilson (vocals, keyboard) Jeffrey Foskett (vocals, guitar) Darian Sahanaja (vocals, keyboards, vibes) Mike D'Amico (vocals, precussions) Nick Walusko (vocals, guitar) Probyn Gregory (vocals, guitar, horns, keyboards) Bob Lizik (bass) Jim Hines (drums) Paul Mertens (saxes, flute, harmonica) Scott Bennett (vocals, keyboards) Taylor Mills (vocals) 短編映画の終了する頃には Brian Wilson がステージに立ってて会場は大騒ぎになりました。再起不能とまで言われた人がステージで両手を突き上げている様子は、やはり感動的です。 今回のライヴは Brian Wilson を会場にいる人が全員でサポートした印象がありました。１曲終わるごとに会場からあたたかい拍手がわき、サポート・メンバーが素晴らしい演奏とハーモニーを聴かせていました。 Brian Wilson の状態については想像していたより悪くはないというようなものでしたが... しかし「Caroline, No」を歌う Brian Wilson には、やはりグッときました。本物が歌うと違います。また「Love and Mercy」も良かった。この曲も名曲です。 あっと言う間に過ぎていった２時間２０分でしたが、３０年以上も前に書かれた曲でも良い曲であれば持ちこたえていくのだなあと感じました。かつて佐野元春さんが Brian Wilson を「２０世紀最大の作曲家」と言った意味が理解できた一夜でありました。 SetList 短編映画20分 01 The Little Girl I Once Knew 02 This Whole World 03 Don't Worry Baby 04 Kiss Me Baby 05 In My Room 06 Surfer Girl 07 California Girls 08 Do It Again 09 I Get Around 10 Let's Go Away For Awhile 11 Pet Sounds 12 South American 13 Surfin U.S.A 14 Back Home 休憩15分 Jeffrey Foskettがメンバー紹介 15 Wouldn't It Be Nice 16 Sloop John B 17 Darlin 18 Add Some Music To Your Day 19 Lay Down Burden 20 God Only Knows 21 Good Vibrations 22 Your Imagination 23 Help Me Rhonda 24 Be My Baby Encore 1 25 Caroline, No 26 All Summer Long 27 Barbara Ann 28 Fun Fun Fun Encore 2 29 Love and Mercy |
||
|home| |
||