|
Joao Gilberto JAPAN TOUR 2004 The BOSSA NOVA〜ボサノヴァの神様〜 |
|
2004年10月3日(日) 大阪フェスティバルホール 1階E列Lサイド25番 Joao Gilberto（Vocal/Guitar） Set List 01 Aguas de Marco 02 Meditacao 03 Eu Sambo Mesmo 04 Caminhos Cruzados 05 Disse Alguem 06 Pra Que Discutir com Madame 07 Voce Vai Ver 08 Retrato em Branco e Preto 09 Wave 10 Curare 11 Um Abraco no Bonfa 12 Samba de uma Nota So 13 Aos Pes da Cruz 突然、約20分間ジョアン・ジルベルト動かなくなる 14 A Felicidade 15 Estate 16 Corcovado 17 Chega de Saudade 18 Desafinado Encore 19 Mulata Assanhada 20 Garota de Ipanema 昨年の初来日公演の模様は聴きに行った友人やメディアから伝え聞いていた。開演が1時間遅れた上にジョアン・ジルベルトの希望で空調が止められたとか、コンサートの最中、ジョアンが20分くらい固まったまま動かなくなり、それはジョアンが日本のオーディエンスに感動して、心の中でひとりひとりにお礼を言っていたからだとか...。しかし、そんなジョアンの伝説めいた奇行はコンサートの素晴らしさにより片隅に追いやられ、短いインターバルで実現した再来日公演を前にして僕はすっかり忘れていた。 会場となったフェスティバルホールに着いて何事もなく開演を待っていたら、突然に空調を止める旨と、まだジョアンが会場に到着していないことがアナウンスされた。ステージは中央にマイクとP.A.システム、ミネラル・ウォーターを置いたテーブルとギター・スタンドがあるだけのシンプルなもので、ギター・スタンドには一本もギターが用意されてなかったし、誰もサウンド・チェックをしていなかった。 それでも会場の雰囲気はなごやかだった。客席にはまだ空席が目立っていた。この日は日曜日で、午後3時からの開演なので、多くの人たちはのんびりと構えているようだった。後になってチケットをよく見ると「本人の都合により開演時間がかなり遅れることがあります。予めご了承下さい。」と書いてあるのを発見した。 結局、開演時間から40分経ってジョアンが会場に到着し、ようやくコンサートははじまった。スーツを着たジョアンは片手にギターを持って確かな足取りでステージ中央に歩み寄った。ギターのチューニングをするとすぐに歌いはじめたが心なしか声が掠れているように聞こえた。薄くなった頭髪に眼鏡、丸みを帯びた体型のせいで気難しい大学教授といった雰囲気がした。「ボサノヴァの神様」と称されるだけあってその存在感は圧倒的だ。 声とギターだけのジョアンのボサノヴァは無添加音楽といわれたりしている。曲名が発音できないので曲名が全然覚えられないのだが、曲を知っていれば何も問題はなかった。リラックスして僕は楽しんだ。クラシックのコンサート並みの緊張感という批評を読んだことがあるが、そんな堅苦しいものではなかった。僕の席から見えるオーディエンスはほとんどがだらりと身体の力を抜いて脱力しているように思えたくらいだ。気持ちのよい波がステージから伝わってきていた。 ジョアン・ジルベルトのギター演奏はかなり変わっているそうで、ほとんどが即興演奏だという。僕が聴いた中でも「フェリシダージ」や「ヂサフィナード」、「イパネマの娘」なんかはオリジナルより長くて即興的だとわかった。 演奏をはじめて1時間くらい経った頃だろうか、ギターを抱えたまま首をうなだれた姿勢でジョアンの動きが止まった。空白の時間がやってきたのだ。オーディエンスはその間も拍手を続け、やがて手拍子になった。そのまま約20分が過ぎた頃、場内に係員が出てきて手拍手をやめるように促した。静寂が一瞬会場を包むとジョアンは何かを呟いて再び演奏をはじめた。これはひとつの芸じゃないのだろうかと思った。 「ヂサフィナード」を歌い終えてジョアン・ジルベルトは立ち上がり客席に向かって一礼をした。そしてステージを後にする際、舞台の袖でもう一度立ち止まり一礼した。アンコールを期待して手拍手が続いていたが、客電が点いて終演を告げる放送がながれた。「ジョアン・ジルベルトは感動して...」と言ったまま放送は途切れ、また場内は暗くなった。ジョアンがアンコールの声に応えてステージに戻ってきたのだ。いちばん最後に演奏したのは「イパネマの娘」だった。 実に奇妙なコンサートだった。伝説を体験したのだと言われればそういうことだったのかもしれない。あと何週間かして、あるいは数ヶ月後、またはもっと月日が流れた後で僕はこの体験をどのようにして思い出すだろう。ジョアン・ジルベルトのコンサートを再び聴きに行こうとする時には。 『Joao Glberto in Tokyo』を購入する。 |
||
|home| |
||